どくとる・めも

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【COVID19】RNAワクチンとは何者か?

※私は医学、薬学の基礎的な知見、およびそれらに関する法整備等について全く無知なので、語彙の使用が不適切となることをお許しいただきたい※

ここにきて、大きなニュースが飛び込んできた。PfizerとBioNTechが開発したコロナウイルス用のワクチンが、臨床試験のPhase 3において90%を超える有効性を示した、というものだ。各メディアも大々的にこのことを報じている。

www.bbc.com

Phase 3はアメリカ食品医薬品局(US Food and Drug Administration; US FDA)による承認を得るための最後のphaseである。承認がなされればワクチンは市場へと供給され、臨床試験はPhase 4へと移行し、長期的なスパンでワクチンの安全性モニタリングがなされることになる。

3, 4というからにはもちろんPhase 1, 2も存在するわけだが、それらについては以下を参照されたい。

Clinical Trial FAQs – NephCure Kidney International ®nephcure.org


無論、解決すべき課題はまだ山積しているだろう。そもそも、コロナウイルスに対する体内の抗体量は、時間経過と共に減少するという報告がなされているから、ワクチンの有用性はもっと長い目で見なければ評価できない。

www.bbc.com

しかし、あくまで私個人の見解としては、喜ばしいニュースであることに違いは無い。どことなく社会全体に閉塞感が漂うこの状況を、さっさと脱出したいものだ。BBCのリンクが多めなのは、単に私が日々の英語学習でよくBBCの記事を読んでいるからというだけで、別に英国に媚びているわけではない。

前置きが長くなった。今回は「RNAワクチン」について扱う。PfizerとBioNTechが開発したというのがまさにこのRNAワクチンなのだが、聴きなれない単語だ。このRNAワクチン、一般的なワクチンとはどう違うのか?という点を掘り下げる。

そもそもRNAってなんでしたっけ?

思えば私が高校で生物を学習してから些か以上に時間が経過しているので、そもそもRNAとはなにかというのを復習しておこう。
知っての通り我々ヒトの体は多数の細胞で構成されており、その細胞内には遺伝子の本体であるDNAが存在している。DNA上の遺伝情報を基にタンパク合成がなされ、日々の生体活動が営まれている。ただしDNAから直接的にタンパク質が合成されるわけでなく、この過程は「仲人」が仲介をすることで成立している。それこそがRNAなのだ。すなわち、DNA上の遺伝情報はRNAへといったん写し取られ、そのRNAをさらに写し取ることでタンパクが合成される。それぞれのプロセスは、転写/翻訳と呼称することになっている。本当はイントロンとかエキソンとかスプライシングとか色々な単語が登場するのだけど、面倒くさいのでパス。

RNAの種類

前節で、RNAとはひとしく翻訳を受けることでタンパク合成に寄与するものであるかのような書き方をしたが、実際にはそうではない。このようなRNAは特にメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれるのだが、翻訳を受けないRNAノンコーディングRNA)も存在する。というかこちらの方が圧倒的に種類が多い。詳細については以下を参照されたい。

ruo.mbl.co.jp

今回の主題であるRNAワクチンはmRNAを用いているので、ノンコーディングRNAについては目をつむる。しかしRNAにこんなに種類があるというのは、恥ずかしながら知らなかった。高校時代はtRNAとリボソームRNAしか習っていないような気がする。

従来のワクチンとの差異

先に述べた様に、一番気になるのは、「RNAワクチンは一般に言う『ワクチン』と何が違うのか?」という点だ。

こちらにわかりやすくまとまっていたので、これを拙訳してみることとしよう。
www.breakthroughs.com
よく見るとページ上部に"Powered by Pfizer"と書かれているので、些か客観性には欠けるかもしれないが...

1.製造に要する日数が短い

従来のワクチンは、鶏卵や哺乳類細胞内でウイルスを増殖させる。これはワクチンの製造・出荷に数か月を要することもあり、今回のコロナウイルスのような新興感染症には対応が遅れがちになる。対して、RNAワクチンは1週間程度で作成可能である。先に述べた様にRNAはDNAから合成されるが、DNAは塩基配列さえ指定してやれば簡単に合成可能だからだ。

2. 安全性が高い

従来のワクチンはウイルスそのものを含有する薬液を取り扱うので、適切に管理されなければ漏えい・感染拡大の危険がある。RNAワクチンでは扱うのはウイルスではなくRNAだから、管理しやすく、安全性が高い。

3. 免疫応答が違う

従来のワクチンはウイルス(抗原)そのものを体内に注射するので、それに対して抗体が産生される。一方。RNAワクチンでは体内に注射された細胞内に進入し、その細胞が抗原を提示することで免疫応答が始まる。いうなれば前者が直接的な抗原提示であるのに対して、後者は間接的な抗原提示だ。

4. 汎用性が高い

従来のワクチンは、対象とする疾病ごとに個別にワクチンを製造する必要があり、いたちごっこに陥りかねない。一方、RNAワクチンは製造プロセスの規格化に長けており、RNAのシーケンスを少し修正するだけで幅広い疾病に対するワクチンが製造可能である。
もっとも、これに関する元サイトの記述は"We anticipate..."という書き出しで始まっているのだが。

大きくはこの4点が、従来のワクチンとRNAワクチンの差異と言える。

終わりに

ワクチン、早く完成してほしいですね(小並感)

余談

ヒトの免疫応答というのは素晴らしいものだと、学ぶ度に感じる。悠久の歴史の中で祖先達が試行錯誤を繰り返して、その結果として得られた免疫システムという恩恵に、我々は日々与っている。そういう私は、幼少期からアレルギー性鼻炎に悩まされている。やっぱ免疫ってクソでは?
幸いなことに、食べ物関連のアレルギーには悩まされていない。食の楽しみは偉大だ。最近は二郎系ラーメンが気になっている。食べ歩きのためにも、速やかな収束を祈りつつ、今回はここでお開き。