どくとる・めも

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【数学】媒介変数表示された関数の概形と増減表

与えられた関数に対して、増減表を書いた後にグラフ概形を描くというのは、高校微積のおきまりのような問題だ。 y = f(x)のように陽関数表示されている場合であれば1回微分、2回微分といった操作をするわけだが、陽関数表示できない媒介変数を用いた関数の場合には、どうすればいいのだろうか?

この疑問に対する回答は、もしかしたら高校在学時に習っていたのかもしれないが、腑抜けた高校時代を送っていた私なので残念ながら全く心当たりがなかった。いい機会なので考えてみよう。

手始めに、サイクロイドを考えてみる。サイクロイドは以下のように表式される。


 
\begin{cases}
x = \theta - \sin \theta \\
\\
y = 1 - \cos \theta \\
\end{cases}


あたかもこれが唯一の表式であるかのような書き方をしたが、任意の正の実数 aに対して x = a(\theta - \sin \theta), y = a(1 - \cos \theta)が成立しているものは全てサイクロイドである。上の例では a = 1というだけだ。

さて、これはどういう形をしたグラフになるだろうか? サイクロイドは、「1つの円がある直線上を滑ることなく回転するとき,その円周上の定点 P が描く軌跡」であるから、実際にコインか何かを転がしてみればわかるのだが、サイクロイドは以下のような形になる( グラフ描画にはCycloid Graphを使用した。)。

f:id:BeeFT:20201201174700p:plain
図1 サイクロイド


先に正解をばらすような形になってしまったが、数学的な議論からこの形が導かれることを確認したいものである。方法としては陽関数の場合と似たように考えて、媒介変数 \thetaに対して \dfrac{dx}{d\theta}, x, \dfrac{dy}{d\theta}, yがどのような挙動を示すか、増減表を書いてみればいい。また、今回は 0 \leq \theta \leq 2\piの範囲を考えることにしよう。簡単な計算で、以下が得られる。


 
\begin{cases}
\dfrac{dx}{d\theta} = 1 - \cos \theta \\
\\
\dfrac{dy}{d\theta}  = \sin \theta \\
\end{cases}


まずは \dfrac{dx}{d\theta}を考えよう。 0 \leq \theta \leq 2\piだから、 \theta = 0または 2\piの時のみ \dfrac{dx}{d\theta} = 0となり、この時の x はそれぞれ 0, 2\piだ。それ以外の \thetaについては \cos \theta< 1だから、 \dfrac{dx}{d\theta}は単調増加になる。

同様に、 \dfrac{dy}{d\theta}を考える。 0 \leq \theta \leq 2\piだから、 \theta = n\pi \ (n = 0, 1, 2)の時に \dfrac{dy}{d\theta} = 0となり、この時の y はそれぞれ 0, 2, 0だ。 \dfrac{dy}{d\theta}  \theta = \piを境目に正負が入れ替わる。 以上をまとめると、以下のような増減表が書ける。

図2 サイクロイドの増減表( \ 0 \leq \theta \leq 2\pi)

これくらいの表なら \LaTeXで簡単に作図できると思ったのだが、よくわからないエラーに見舞われてずいぶん時間を食ってしまった。改めて、得られた増減表とサイクロイドのグラフと比較してみよう。

図3 サイクロイド( \ 0 \leq \theta \leq 2\pi)

確かに、増減表と整合する形になっている。しかしここで疑問が一つ生じる。二次微分は考えなくていいのか?一次微分のみでは、 x, yが増えたり減ったりすることはわかったとしても、どう増えてどう減るのか(増えてはいるけど増加率は減少しているとか、減少しているけど増加に転じそうだとか)がわからないはずだ。この増減表だけでは、 x = \piで尖点を持つようなグラフもかけてしまう。

この疑問は実際その通りで、 \dfrac{d^2 y}{dx^2}を考えないと、図3のような軌跡は得られない。


 
\begin{align}
\dfrac{d^2 y}{dx^2} &= \dfrac{d}{dx} \left( \dfrac{dy}{dx} \right) \\
&=\dfrac{d}{dx} \left( \dfrac{\frac{dy}{d\theta}}{\frac{dx}{d\theta}} \right) \\
&=\dfrac{d}{dx} \left( \dfrac{\sin \theta}{1-\cos \theta} \right) \\
&=\dfrac{d}{d\theta}  \left( \dfrac{\sin \theta}{1-\cos \theta} \right) \cdot \dfrac{d\theta}{dx} \\
&=\dfrac{1}{\cos \theta-1}  \cdot \dfrac{1}{1-\cos \theta}\\
&=-\left( \dfrac{1}{\cos \theta-1} \right)^2 < 0
\end{align}


二次微分が単調減少だから、曲線は上に凸となるはずである。これで、サイクロイドはやはり図3のような軌跡を描くことが確認された。

媒介変数表示される曲線というのはまだまだあるが、今回はここで幕引きにしようと思う。