どくとる・めも

化学、数学、プログラミング、英語などに関する諸々

【物理学】室温でも超電導?

大きめの仕事を一つ片づけたので、久しぶりにちゃんとしたエントリを書こうと思います。ほんとはまだまだ仕事残ってるけど。

今までこのブログでは取り扱ってこなかったが、今回のテーマは物理学関連だ。というのも私の高校時代の物理学の成績は惨憺たるものだったし、大学に入学してからも一般教養科目の物理で単位を落としかけて、留年に片足突っ込んでいた時期もある。はっきり言って、私の物理センスは皆無だ。そんな人間が博士課程まで進学しているのだから、世の中わからないものだ。

タイトルにもあるように今回のテーマは「超電導」だ。今更ながら、こんな面白いニュースを見つけた。

www.sciencenews.org

Sciens News(Science News | The latest news from all areas of science)は掲載されているトピックが興味深い上に、英語の勉強にもなるので、興味のある方は覗いてみてはいかがだろうか。

閑話休題。電気抵抗がゼロになり、かつマイスナー効果が観察されるとき、これを「超電導」という。超電導状態を意図的に引き起こすことができれば、電気抵抗がゼロなので、発電所から家庭まで一切のロスなく電気を輸送できることになる。そのほかにも、超電導現象は日常の様々な波面に応用可能であると期待されている(超電導ってなあに)。


ところがこの超電導には大きな問題があって、それは極めて低い温度で発生した例しか知られていないという点だ。超電導現象が初めて発見されたのは1911年(意外と歴史がある)だが、この時の超電導現象を生み出した周辺温度は-273.15℃だった。もはや絶対零度である。

その後、時代の流れと共に研究も進み、-20℃程度の温度でも超電導現象を引き起こせることが明らかとなった。とはいえ、我々にとっての「室温」との乖離は依然として大きく、なんらかのブレイクスルーが望まれている。

先ほど紹介したSciens Newsの記事中には、なんと15℃で超電導現象を観察したとある。寒がりな私からすると依然として低い温度のように見えるが、ほぼ絶対零度の低温から始まったことを考慮すると、極めて大きな発見と言える。

Diasらは、炭素・水素・硫黄からなる材料を2つのダイヤモンドで挟み込み、レーザー光を照射しながら極めて高い圧力(なんと260万気圧!)をかけるという実験を行った。すると超電導現象が観察されたというのだ。

260万気圧などと言われても数字がインフレしすぎていてどの程度の圧力なのかピンと来ない。なにか参考になる数字はないかと簡単に検索したら、地球最深部の圧力が360万~370万気圧程度らしい(https://www.sojo-u.ac.jp/manabi/pdf/toform/pro/mec_pro1_1606.pdf)。260万気圧というのは地球内部の圧力に匹敵するということだ。というか、実験室でそんな高圧を生み出せるのがまず驚きである。

15℃で超電導現象が観察されたというのは注目に値するというほかないが、これほどの高圧が必要となると、実用化への道のりは依然として長そうだ。また、「炭素・水素・硫黄からなる材料」って具体的に何なのよと言いたくなるが、Diasらにも正確な組成は分かっていないようで、なぜ超電導現象が観察されるのか説明がつかないらしい。

いずれにせよ、この発見が現代社会のエネルギー問題を解決するための一助となることを期待しよう。

本題とは関係ないが、英語関係でひとつ。先ほどのSciens Newsの記事中に、以下の様な文があった。

The team’s results “are nothing short of beautiful,” says materials chemist Russell Hemley of the University of Illinois at Chicago, who was not involved with the research.

”nothing short of A”で「まさにAにほかならない」という意味だ。上の文で言えば、「チームの発見は、まさに美しいというほかない」といったところだろうか。

しかし前置詞ofの後に形容詞beautifulが続いているのは「?」である。まあ、nothing short ofという表現だけ覚えることにして、細かいことは無視しよう。

それでは今日はここでお開き。