どくとる・めも

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【高校数学】剰余の定理と因数定理

はじめに

以前扱った整式の除算(【高校数学】整式の除算(割り算)、剰余 - どくとる・めも)の続き。

前回は「除法の原理」を紹介し、整式に対しても普通の数と同じように除算を考えられること、商と剰余がただ1つに決まること、などを学んだ。

ただしこれだけでは、実際の大学入試問題ではあまり役に立たない。前回の内容をもう少し拡張し、今回は「剰余の定理」と「因数定理」を学ぼう。

剰余の定理の主張

まずは剰余の定理の主張の確認から。


関数 f(x)を一次式 x-aで割ったときの余りは f(a)である。


ふむ、本当にそうだろうか?試しに f(x) = x^2 -5x + 7 x-2で割ってみる。

 x^2-5x+7 = (x-2)(x-3)+1だから商は x-3、剰余は 1となる。

 f(2) = 4-10+7 = 1...なるほど、確かに整合する。

しかし、なぜ剰余の定理は成立するのか?

剰余の定理の証明

前回のエントリの「除法の原理」で考えた様に、 f(x) x-aで除した時の商を Q(x)、剰余を R(x)とおけば、 Q(x)ならびに R(x)はただ一つに定まる。そこで、これらの具体的な中身は一旦無視して、


 f(x)=(x-a)Q(x)+R(x)


という関係を考えよう。すると、どう見ても f(a) = R(x)である。証明がシンプルすぎて証明と言えるのかどうかも疑問符だか、とにかくこれで証明できている。

あえて付け加えるなら、この定理は剰余にしか着目していない。商 Q(x)の中身は、全く持って不明である。この定理でわかるのは、あくまでの剰余だけ。

剰余の定理の補足

しかしながら、 f(x) x-aで割りたい、というのはいささか以上に特殊なケースと思われる。実際には二次以上の式で割りたかったり、 ax+bのような式で割りたかったりするだろう。

どちらの場合においても f(x)=g(x)Q(x)+R(x)と置いてみて考えればいいのだが、 g(x)が二次以上となると、 g(c)=0となるような定数 cを見つける難易度がグンとあがる(というか見つかるとは限らない)。

しかしながら、 g(x) ax+bのような一次式なら、まだなんとかなる。 g\left( -\frac{b}{a} \right) は0なので、先ほどの証明と同様の考えを適用できる。

実際にやってみよう。 f(x) = 2x^2+7x+5 2x+1で除するケースを考える。

 f(x) = (2x+1)(x+3)+2なので、このケースでの剰余は2となる。また、 2x+1=0、すなわち x=- \frac{1}{2}として考えれば、


 f(-\frac{1}{2})=\frac{1}{2}-\frac{7}{2}+5 = 2


やはり成り立っている。めでたしめでたし。

因数定理の主張

剰余の定理が一段落したところで、次は因数定理の確認に移る。

まずは、因数定理がどのような定理であるかを確認しよう。こちらの主張も非常にシンプルで、


関数 f(x) x-aを因数に持つ \Leftrightarrow f(a)=0


 f(x) x-aを因数に持つというのは、 f(x) x-aと別の関数 Q(x)を用いて


 f(x) = (x-a)Q(x)


のように表せるというのと同義である(因数の定義については、因数とは?1分でわかる意味、因数の例と見つけ方、30と20の因数、素数との違いを参照)。

すなわち、今まで除法の原理や剰余の定理で考えていた剰余 R(x)が0のケースとなる。

因数定理の証明

剰余 R(x)が0だから、どう見ても f(a)=0である。これで、


関数 f(x) x-aを因数に持つ \Rightarrow f(a)=0


が証明できた。次に、この命題の逆、すなわち


 f(a)=0  \Rightarrow f(x) x-aを因数に持つ


を考える。先に述べた様に、剰余 R(x)が0なのはわかりきっているのだが、証明の関係上


 f(x) = (x-a)Q(x)+R(x)


と置いてみる。この時 f(a) = R(x)であり、今は前提条件として f(a) = 0を考えているのだから、やっぱり R(x)=0である。つまり、


 f(x) = (x-a)Q(x)


上の式は、 f(a) x-aを因数に持つ形になっている。これで因数定理を証明できた。

終わりに

前回のエントリと合わせて除法の原理、剰余の定理、因数定理を学んだ。次回は、因数定理を用いる実際の入試問題を扱う予定。