【数学】積分により曲線の長さを求める
数学のことを綴るブログであると自称しながら、未だに数学関連のエントリが無いことに焦りを感じつつ、これを執筆している。
相変わらず突拍子がなくて申し訳ないが、数学エントリの第一稿として弧長積分を取り上げることにした。というのも、熱力学で出てくる周回積分を理解しようと思ったら、まずこいつを理解しなければならないようなので。
途中で糞雑魚PowerPoint作画が登場するのをお許しいただきたい。Grapherも使えないの?そんなんじゃ甘いよ(自戒)
発想はむしろ微分
さて、平面上に以下のような曲線が与えられたとしよう。本日の議題は、このの長さを求めることだ。どうすればいいだろうか?
発想は単純で、この曲線を細かく分割してやればいい。そうすれば、分割して得られる細かい断片たちを直線として近似できる。その上で、断片たちの長さを全て足し合わせることで、曲線全体の長さとしよう、ということだ。最終的には積分で物事を議論するが、スタートの発想はむしろ微分的な考え方と言える。
分割した後の断片を拡大してみる。断片の始点と終点の座標がそれぞれ, だとすれば、この断片の長さは三平方の定理より
として求められる。
あとはこの微小断片どうしをつなぎ合わせればいい。すなわち、曲線を個の断片に分割した時、
を求めればいい。の上限がとなっているのに引っかかる方もいらっしゃるかもしれないが、これは分割してできた一番最初の断片(=一番左端の断片)をという風にナンバリングしたからだ。ここでの上限がだとすると、個の短冊に分割することになるから、矛盾してしまう。逆に言えば、の上限をにしたければ、一番最初の断片(=一番左端の断片)をとナンバリングすればよい。どちらでも結果は一緒だ。
そして、の値が大きければ大きいほど、すなわち分割の幅が細かければ細かいほど、各断片はより直線的になり、真のの長さに近づくだろう。だから、次のような極限を考える。
ここで、の関係に基づいて、この式を書き換えてみる。すると、
根号内をで除した形に変形すると、
ここではとした。が十分に大きければ、よりもとした方が妥当だろう。
そして、鋭い方はお気づきのことと思うが、わざわざこんな変形をしたのは平均値の定理を使うためだ。平均値の定理の主張は関数が閉区間で連続かつ開区間で微分可能ならば、
なるが存在するというものだった。今回のケースは、
なるが存在すると考えよう。すると先ほどの式は
と変形できた。ここまでくればもうゴールは見えている。実はこれは、区分求積法の基本式の形そのままだ。
積分の最も基本的なイメージというのは、この図のように、ある関数(図1の曲線と区別するために、ここではとした)を対象として区間上を無限に細かく分割し、得られる短冊の面積を足し合わせるというものだった。区間を等分した時、各短冊の横の長さはであり, 縦の長さはである。まとめると、求める面積をとおけば、
ということになる。は限りなく大きくするから、
この式と先ほどの式を比較してみよう。
実に似ている。上の式ではではなくとなっていて、に依存してその値が変わるようにも見えるが、実際には定義域を等分割するのが自然だから、がなんであろうとの値は不変だ。だからとしてしまっていいだろう。そして、下の式は積分に帰着できる。したがって、上の式も同じように積分に帰着できて、
ずいぶん時間がかかってしまったが、これが曲線の長さを積分により求めるための式だ。
媒介変数表示された関数を扱う場合
ところが待ってほしい。先ほどの例では、暗黙のうちにという形で陽関数表示できるものを相手にしていたが、実際には媒介変数表示された関数を相手にすることもあるだろう。その際、先ほどの式では全く太刀打ちできないから、もう少し考えを深めてみる。
とはいっても、考え方はほとんど一緒だ。媒介変数の微小変化に対するの変化量を , の変化量をとして、先ほどと同じようにとする。ところがこれは陽関数表示できない(できたとしてもかなり面倒な計算になることが予想される)から、さっきのような変形はやめて、
と書き換えてみた。以降は同じように考える。今考えている関数がのように媒介変数表示されるなら、同じように平均値の定理を用いて
ほとんど同じ議論だったわけだが、積分範囲には要注意だ。今回の積分変数は媒介変数であるから、先ほどの積分範囲と区別する意味でとした。
終わりに
数式を交えて記事を書くのはかなり疲れたし時間がかかったが、いい勉強にはなった。式の導出だけしておしまいというのでは味気ないから、実際に弧長積分を扱う例題を加筆予定だ。ひとまず現時点ではここまででpublishする。