どくとる・めも

化学、数学、プログラミング、英語などに関する諸々

【化学】ソックスレー抽出の原理と目的

ここ数日は公私ともにイベントが立て込んでいて、忙殺された結果ブログ更新どころではなくなってしまいました。また、ぼちぼちやっていくのでよろしくお願いします。

そろそろ化学系のエントリを充実させたくなってきたので、今回は「ソックスレー抽出」を扱う。私にとってソックスレー抽出は、以前に書いたDean-Stark装置(【化学】Dean-Stark装置を使って水分を系外に除去しよう - どくとる・めも)と同様、名前はよく耳にするが深く知っているわけではないという手法のひとつだった。この機に、そのわだかまりを解消しようと思う。


目次:

ソックスレー抽出の概要

「そもそもソックスレー抽出とは何か?」という問いに対する最もシンプルな答えは「固体試料から目的成分を抽出・回収するための操作」」と言える。ちなみに「ソックスレー」というのは、この装置の考案者であるドイツの化学者Franz Ritter von Soxhlet氏の名前が由来となっている。

ソックスレー抽出装置の装置構成

装置構成の図については、名城大学の永田先生のブログに掲載されているものが一番わかりやすかったので、これを基に説明する。

www2.meijo-u.ac.jp

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図1 ソックスレー抽出装置の装置構成(出典: http://www2.meijo-u.ac.jp/~tnagata/blog/20130913.html

ただしこの図のみでは必要十分とは言えないから、いくつか補足を。

先に述べたように、ソックスレー抽出は固体試料を対象とした抽出方法なので、まずはその試料がないと始まらない。図の中央部に太めの円柱があるが、この中に試料を置き、その周囲をろ紙で覆う。

図の下部にあるのは溶媒溜めであり、これをマントルヒーターなどで加熱する。すると溶媒蒸気が装置上方へと移動し、冷却塔で再び液化して、先ほど試料をセットした円筒内に液化した後の溶媒が滴下する。すなわち、滴下した溶媒と試料が物理的に接触し、試料中の溶媒可溶成分が抽出される。

抽出後の成分を含んだ溶媒はどんどんと中央の円柱および側管に溜まっていき、フラスコ内の溶媒は減少していくが、操作を継続していると溜まった溶媒の水位が側管の高さと等しくなり、サイフォンの原理によって下部フラスコへと再び戻るという仕組みになっている。これを繰り返すことで、フラスコ内部の溶媒中に含まれる試料成分濃度はどんどんと上昇していき、高濃度抽出液を得ることが可能となる。動作原理自体は、比較的単純だ。

サイフォンの原理についても簡単に解説しようと思ったのだが、調べているうちになかなかにcontroversialな展開になっているということが判明した(重力説とか大気圧説とか)ので、ここでは控える。

まとめ

ソックスレー抽出は、固体試料を対象として目的成分を抽出・回収する方法である。身近な例で例えるなら、コーヒー豆から抽出した後の液を、水だけ蒸発・再凝縮させたのちに、再びコーヒー豆と接触させてさらなる抽出液を得る、といったところだろうか。

動作原理が思いの外シンプルだったので、比較的短めのエントリとなったが、今日はここでお開き。