どくとる・めも

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【数学】積分により曲線の長さを求める【実践編】



以前に、積分によって曲線の長さを求める方穂を述べた(【数学】積分により曲線の長さを求める - どくとる・めも)。今回はこの方法を使い、例題を解いてみよう。

陽関数表示されている y = f(x)型の問題と、媒介変数表示されている x = f(t), y = g(t)型の問題を、それぞれ1題ずつ取り上げる。

例題1 陽関数表示型

関数 y = \dfrac{e^x + e ^{-x}}{2} 0 \leq x \leq 1の部分の長さ Lを求めよ。

(解説)
陽関数表示されている場合の曲線長は、


 L = \displaystyle \int_a^b \sqrt{1 + \left\{ f'(x) \right\}^2}dx


を用いて求めればよいのだった。まずは与えられた関数を微分すると、


 y' = \dfrac{e^x - e ^{-x}}{2}


が得られるというのは解説不要だろう。あとはこれを積分すればいいのだが、実際に計算しようとすると、


 L = \displaystyle \int_0^1 \sqrt{1 + \left( \dfrac{e^x - e ^{-x}}{2} \right)^2 }dx


となり、中々に仰々しい格好をしている。これをそのまま積分するのは骨が折れそうだ。もう少し簡単に、すっきりとかけないものだろうか?

実はこの例題で扱っている yおよび y'双曲線関数と呼ばれるものであり、


 
\begin{cases}
\sinh x = \dfrac{e^x - e ^{-x}}{2} \\
\cosh x = \dfrac{e^x + e ^{-x}}{2} \\
\end{cases}


という風に定義するのだった。この問題では y = \cosh x , y ' = \sinh xだと言える。

そして実際に計算してみればすぐにわかるが、これらの関数の間には


 
\cosh^2 x - \sinh^2 x = 1


という性質が成り立っている。これを使えば、先ほどの仰々しい積分をかなり簡略化できる。


 
\begin{align}
L & = \displaystyle \int_0^1 \sqrt{1 + \left\{ \dfrac{e^x - e ^{-x}}{2} \right\}^2 }dx \\
& = \displaystyle \int_0^1 \sqrt{\cosh^2 x}dx \ (\because \cosh^2 x - \sinh^2 x = 1)\\
& = \displaystyle \int_0^1 \cosh xdx \ (\because \cosh x \geq 0)\\
& = \displaystyle \int_0^1 \dfrac{e^x + e ^{-x}}{2} dx \\
& = \dfrac{1}{2} (e - \dfrac{1}{e})
\end{align}


これで例題1は完了。

例題2 媒介変数表示型

 x = e^t \cos t, y = e^t \sin tとして媒介変数表示される曲線の、 0 \leq t \leq 2\piの部分の長さ Lを求めよ。

(解説)
媒介変数表示されている場合の曲線長は、


 L = \displaystyle \int_\alpha^\beta \sqrt{ \left( \dfrac{dx}{dt} \right)^2 + \left( \dfrac{dy}{dt} \right)^2 }dt


を用いて求めればよい。 x,  yをそれぞれ tについて微分する。


 
\begin{cases}
\dfrac{dx}{dt} =e^t \cos t - e^t \sin t \\
\dfrac{dy}{dt} = e^t \sin t + e^t \cos t \\
\end{cases}


あとはこれを積分すればいい。特に難しい部分はないので、以下の計算は省略気味。


 
\begin{align}
L &= \displaystyle \int_\alpha^\beta \sqrt{ \left( \dfrac{dx}{dt} \right)^2 + \left( \dfrac{dy}{dt} \right)^2 }dt \\
& = \sqrt{2} \displaystyle \int_0^{2\pi} e^t dt \ (\because \sin^2 t + \cos^2 t = 1, e^{2t} \geq 0) \\
& = \sqrt{2} (e^{2\pi}-1)
\end{align}


例題2もこれで完了だ。

終わりに

今回の問題では平易な積分しか登場しなかったが、実際の問題ではより高度なテクニックを要求されることもあるだろう。ともあれ重要なのは、曲線長の公式をどういう考え方で導出するのか、という点だ。結局は三平方の定理で求めた長さの二乗値のルートをとっているだけということを頭に入れておけば、公式の誤用も減るだろう。

(本エントリは、弧長積分の公式の証明と例題 | 高校数学の美しい物語を参考に作成しました)